終わらない夜の守り方

インナージャーニー
終わらない夜の守り方
2026年7月3日に“インナージャーニー”がメジャー2ndシングル「終わらない夜の守り方」をリリースしました。聴く人に安心感を与える“お守り”のような存在として、心地よいサウンドでリスナーの心を優しく包み込んできた彼ら。今作のタイトル曲は、TVアニメ『世界最強の後衛~迷宮国の新人探索者~」のエンディングテーマとなっております。 さて、今日のうたコラムではそんな“インナージャーニー”のカモシタサラによる歌詞エッセイをお届けします。綴っていただいたのは、新曲「終わらない夜の守り方」にまつわる物語。夢か現実か、異世界か…。“明大前の裏側”で見たもの、気づいたこと、そして思い出したこととは。 2025年7月15日の夕方。ラジオ収録を終えたわたしは、井の頭線明大前駅の改札を抜けて歩いていた。疲れた足を引きずりながらも新曲を書き上げなければいけない。太陽が沈みかけた夕方、雨上がりの空の一点をじっと見つめてみる。すると突然空に曲線を描いた亀裂が入り、パカっと二つに割れてしまった。経年劣化したトイレの蓋のようだった。裂け目の向こうは金色に光っていて、ラメ入りのマニキュアのようなきらきらとした液体が今にも溢れ落ちてしまいそう。周りは誰も気づいておらず、とっさにスマホのカメラを起動したがなにも映らない。わたしは直感で光へと向かった。夢だったら確実に飛べる、一か八かの可能性をかけて片足でトスっと地面を蹴り上げる。するとなんと空のほうからこちらに近づいてきたではないか。不可抗力で金色の裂け目に吸い込まれ、世界から音が消え、目の前が貧血の直前のような緑色の景色になる。もうだめだと強く目を瞑り、かれこれ3分くらい経っただろうか。おそるおそる目を開けると、わたしは明大前の裏側にいた。 昔から知っていたような、初めて見る景色。暗闇の中、「ここはどこ?」と聞いても返ってくるのはF♯majの音だけ。死んだのかもしれない。しばらく狼狽えていると、遠くのほうに人だかりができている。道行く人の話によると、どうやらこれから新しい職業に就かなければいけないらしい。しかも選べる。なんのこっちゃわからないままかなり悩んだが、やっぱりわたしはこの世界でもまだ音楽がやりたい。というか今はなんとしても、『世界最強の後衛』のEDを完成させたい。初めて決まったアニメの書き下ろしだ。お医者さんに渡す問診票の職業欄の表記でもいつも迷うわたしは、音楽家?作曲家?バンドマン?アーティスト?自営業?だと守りに入りすぎか、などと散々考えたあげく、なんでもありな気がして「メジャーアーティスト」と名乗った(満を持してキングレコードからデビューしました!ありがとうございます)。 メジャーアーティストカモシタは、この世界でどうみても物語の中心にいるであろう人間の後ろをばれないように着いていくことにした。後部有人と名乗るその人物は、どうやら職業欄に「後衛」と書いてしまったらしい。仲間の背後を守るというその職業はこの世界でも珍しがられていたが、少し経つと彼の周りにはたくさんの味方が増えていた(詳しくは毎週日曜日の夜、テレビの向こうを覗いてほしい)。とにかく旅が進むほど、この人といれば大丈夫だと思わせてくれたのだ。それは、絶対に全員で生き延びることを考えていて、誰のことも置いていかなかったからだと思う。生きるか死ぬかの状況ですべてを優しく包み込み受け止める姿は、変わることのない大きな夜空のようだった。 わたしは前の世界のことを思い出していた。よく「明けない夜はない」と言われるが、わたしは朝が怖い。自分の輪郭をはっきりと捉えられてしまう朝。みんなが一斉に動き出し、すべてが始まる朝。外側に向かうエネルギーよりも、わたしは、心の隠れ家のような暖かさがほしい。息を吸って吐いて、自分の存在を確かめたい。少しでも明るいほうへ進むためには、心の中に夜を作ることが必要なのだ。きっと、仲間やわたしの心の中の夜すらも守ってくれたから、彼を信じることができたのだと思う。 なにか、思いつきそうだった。メロディと歌詞がすぐそこまで来ている。もしかしたらわたしは、争いが絶えないこの世界に音楽を添え、物語を締め括るために呼ばれたのかもしれない。これからどんなにしんどい時代が来ようとも、音楽はいつだって自由だ。 気がつくとわたしは、明大前にいた。けれどさっきとは景色が違って見える。スマホの写真フォルダは変わらないままだが、ボイスメモには新規録音が1件追加されていた。タイトルは「終わらない夜の守り方」。どうかこの曲が、あなたの心の中の夜を守りますように。 <インナージャーニー・カモシタサラ> ◆メジャー2ndシングル「終わらない夜の守り方」 2026年7月3日発売 https://innerjourney.lnk.to/owaranaiyoru




















