残したいもの

  2026年7月15日に“androp”がニューアルバム『imperfect』をリリース!タイトル『imperfect』(インパーフェクト=不完全)には“完璧を作成しやすくなった時代、完璧を求められる時代、だからこそ迷い・傷・余白・時間の痕跡にこそ、生きている実感と美しさが宿る。”という想いが込められております。
 
 さて、今日のうたではそんな“androp”の内澤崇仁による歌詞エッセイを2日連続でお届け。第2弾では、今作で自身が向き合っている「違和感を触り直す」、「余白を支える音」、「作品として残したいもの」というテーマについて綴っていただきました。



・違和感を触り直す
 
制作を続ける中で、今までになく季節をテーマにした曲が多くなった。
春の「Mirai Bana」「Sakura Song」、秋の「Magic Hour」、冬の「Santa」。
同じ季節でも、毎年まったく同じ心象にはならない。
その違いに重なる言葉を想像しながら、一曲一曲と向き合っている。
 
制作の過程では、形になりそうなものを一度崩してみることがある。
意味は通っているし、流れも自然。それでも、どこか違うと感じる瞬間がある。
その違和感を見過ごさずにいると、一度整えたものを手放し、もう一度触り直すことになる。
そうやって、形になりかけたものを何度も行き来している。
 
・余白を支える音
 
何を正解とするかは、自分でもはっきりとはわからない。
ただ、きれいに整ったものよりも、予定調和ではないものの方に耳が向くことが増えた。
例えば「Magic Hour」では、歌詞ですべてを説明しきらない形を選んだ。
心情を言い切って定義するのではなく、あえて言葉の余白を残した。
そのような余白を、わずかにずれているリズムや、揃いきらない声の重なりがそのまま支えてくれることがある。
言葉とメロディは、そうやって互いに支え合っているのだと思う。
 
伝わるように整えようとすれば、意味は明確になる。
でも、その分だけ削ぎ落とされてしまうものがある。
逆に、残しすぎると、今度はどこか嘘くさくなる。
その「あいだ」で、どこまで言葉にするかを探っている。
はっきりと言い切らないことで残るものもあれば、言い切らなければ届かないものもある。
 
その境目を探す作業は、思っているよりもはるかに時間がかかる。
andropで17年向き合い続けても、いまだにルールは見つからない。
他人から見れば、大きな違いではないかもしれない。
それでも、そのわずかな差の中にしか残らない体温があると感じている。
 
・作品として残したいもの
 
録音した音を何度も聴き返していると、最初は気付かなかった言葉の引っかかりが浮かび上がってくることがある。
整っていないように感じた響きが、あとになって深く心に残ることもある。
何を残して、何を消すのか。
その判断の積み重ねが、このアルバムになっていく。
完成に近づいているのかどうか、自分でもわからなくなる瞬間がある。
一ヶ月悩んだものが、数分で決まることもある。
うまく説明はできないけれど、その迷いや感覚ごと、作品として刻みたい。
ようやく出口が見え始めてきたこのアルバムが、一人ひとりの中で、長く残り続けるものになることを願っている。
 
<androp・内澤崇仁>