ハードロックが好きだった。

 2026年7月29日に“Penthouse”が3rd Album『Neon Garden』をリリースしました。最新曲「一二三」「青く在れ」などを含む全10曲を収録。Penthouseの真骨頂ともいえる洗練されたアンサンブルと多彩なボーカルワークが凝縮され、ポップス、R&B、ソウルを自在に横断する唯一無二のサウンドがさらに進化。活動の過渡期である現在、改めて今の自分たちのルーツやオリジナリティを洗い出し磨き上げたサウンドが集結しています。
 
 さて、今日のうたではそんな“Penthouse”による歌詞エッセイを3週連続でお届けします。最終回は浪岡真太郎が執筆。ハードロックを愛し、J-POPをどこか遠ざけていた自身が、さまざまな出会いを経てPenthouseへ。そして、今作『Neon Garden』でやりたいと思ったことは…。



ハードロックが好きだった。
Penthouseで僕を知ってくれた人からすると意外かもしれない。
幼少期、父の車のステレオからDeepPurpleやらLed Zeppelinが流れてくるのを、何も知らずに聞いていた。思春期になる頃、結局そういうのが肌に合う気がして、深みにハマっていった。いや、当時は認識を拒んでいただけで、人と違う音楽が好きなのがかっこいいと思っていただけかもしれない。ともあれ大学で上京してから8年間、ロン毛の上半身裸の成人男性が4人でデカい音を出すバンドを大真面目にやっていた。
 
音楽が好きになると、多くの場合、好みは偏る。或いはそれが行きすぎて特定のジャンルを貶めたりする人もいる。だいたい槍玉に上がるのはその時勢いのあるJ-POPだ。僕も一時期、例に漏れずその道を辿った。ハードロックこそが至高だったし、J-POPはダサかった。
 
8年間続けたハードロックバンドは、売れなかった。
メジャーデビューもし、アメリカツアーもやったが、それだけで食べていくには程遠かった。
 
目が覚めるきっかけを与えてくれたのは大学のサークルだった。オールジャンルのコピーバンドサークル。そこではジャンルに貴賎はなく、音楽のありとあらゆる「良さ」を正面から受け止める気風が根ざしていた。ハードロックはもちろん、ファンクもレゲエもジャズもJ-POPも歌った。
 
そこで出会ったメンバーで結成されたのがPenthouseというバンドだった。ハードロックで売れる夢こそ途絶えたが、ここ数年はちゃんとJ-POPというものに向き合う日々を送っている。ハードロックをやり切ったからこそ、一周してきたからこそ、真摯に向き合う覚悟がついたと思う。毎日、J-POPという「全員」が好きになる音楽の奥深さを目の当たりにしている。楽しい。こんなに楽しい仕事はないと思う。
 
思うのだが、思いながらも、時々振り返る。
疲れた時なんかは、自分が好きな曲を何も考えずに聴く。
Lawrenceというバンド。ニューヨークを中心に活動していて、兄妹が変わるがわるリードボーカルをとる。
ジャンルはレトロPOPとか言われることが多いようだが、ファンクの影響も色濃く感じる。
ファンクというジャンルは、件のサークルでは花形だった。先輩たちの洗練された演奏に憧れ、広くブラックミュージックを聴き漁ったのをよく覚えている。僕が一番好きなハードロックバンド・エアロスミスは、ファンクの影響を受けているらしいという話も腑に落ちるようになった。こういう経験はきっとPenthouseメンバー全員に共通する原体験だ。
 
彼らLawrenceが最新アルバムで「Hip Replecament」という曲をリリースした時、僕の中に衝撃が走った。どう聴いたってTower of powerの「What is hip?」のオマージュだった。「What is hip?」といえば、例のサークルの当時のアンセムで、僕も何度も歌ったことがある。全く違う場所で、全く関わりがない人たちが、同じ音楽に魅了され、同じような青春を過ごしてきたであろうことに感動した。
 
同時に、俺もやろう、と思った。今ならできるという確信があった。Penthouseを通じて、今まで300曲アレンジを書いてきたことで、ピアノはミュート奏法にして一部オートワウをかけようとか、バリトンサックスとその他セクションの掛け合いを作ろうとか、アイディアがたくさん湧いてくるようになった。歌とギターには僕のハードロック愛も込めた。
 
出来上がった楽曲は、普段の表向きのPenthouseからは想像できないようなテイストで、面食らうファンもいるかもしれない。
ただ、サブスク全盛期、アルバム1枚通して聴くなんていうのは律儀な音楽ファンしかやらないことになってしまった今、逆にアルバムでやるべきことはこれなのかもしれないとも思う。Penthouseにハマってくれた人が、音楽の幅を広げる機会を提供できたら嬉しい。僕がこれまで感じてきたような世界の広がりと、そこから生まれる世界との繋がりを、みんなにも感じてほしいと思う。
 
<Penthouse・浪岡真太郎>



◆3rd Album『Neon Garden』
2026年7月29日発売