| 銀の目と夜のようにひとりの少年は衝動のままに生きていた 胸の内に燻る獰猛な衝動を 押さえることができなかった 暴れる彼を止めようと 火掻き棒が彼の顔にめがけて振り下ろされた 片目を潰された繭期の少年 白濁した瞳は光があたると銀色に輝いて見えた 片目が銀色の目をした吸血種の物語 一度目の脱走は 嘘みたいに呆気なく失敗に終わった 二度目の脱走は 懲罰房から出てすぐのこと このときの脱走は成功する そのあとすぐに捕まって 二週間の懲罰房入り 三度目の脱走も成功する 毒の血のジュース事件を知ってるかしら? クランの食堂で出された兎の血のジュースに リコリスの毒が混入されていた 毒の血のジュースを飲んだ生徒で 医務室は溢れ返り クラン中が大騒ぎ 騒ぎが収まった頃 少年の姿はすでに消えていた 血盟警察が動き出す事態になったけれど 誰も彼を見つけることはできなかった 少年が向かったのは人間種の世界 互いの世界を侵犯してはならぬ 不可侵条約があればこそ 吸血種が身を隠すには打ってつけの場所 喉の渇きを潤すために少年は 夜道をひとり歩く少女を獲物に定めた 首筋に牙を突き立てようとした 少年の目は闇に吸い込まれる まるで死んでいるかのような白い肌 まるで夜しかしらないような黒い瞳 夜のような少女は怯える様子もなく 心奪われた少年は一目で恋に落ちたのだった 人間種と吸血種 互いに世界を別つふたり 両親を亡くして孤独である少女は 自分を襲おうとした少年を匿った 彼が吸血種であることをわかりつつ 少女はどこからか手に入れた血液を 少年に施し与え その渇きを癒す 時を同じくして その少女の住む村は恐怖に陥っていた 村の人間が次々と殺されていった 猟奇的連続殺人事件 誰の仕業かもわからずに 村中に疑心暗鬼が蔓延する ある日少年は物音に気付く 真夜中に少女がどこかに出かける 後を追う少年 少女は歩みは迷いなく そこは若い夫婦の住む家だった 少年が窓から覗くと 身重の妻が殺されていた 小さな村を震撼させた 猟奇的連続殺人事件 すべては彼女の仕業だった 夜のような少女 一目で恋に落ちた 夜のような少女 血を与えてくれた 夜のような少女 彼女は狂気の虜であった 気がつくと少年のその手は 少女の首を絞めつけていた 夜は恍惚とした笑みを浮かべながら 少年の手によって息絶えた その光景を見ていた者がいた 妻を殺されたばかりの男だろう 少年はすぐさま逃げ出した 夜のような少女 彼女の犯した罪のすべては 少年のものとなるだろう 片目を潰された繭期の少年 白濁した瞳は光があたると銀色に輝いて見えた 片目が銀色の目をした吸血種の物語 | TRUMPシリーズ 繭期幻想樂団 | 末満健一 | 和田俊輔 | | ひとりの少年は衝動のままに生きていた 胸の内に燻る獰猛な衝動を 押さえることができなかった 暴れる彼を止めようと 火掻き棒が彼の顔にめがけて振り下ろされた 片目を潰された繭期の少年 白濁した瞳は光があたると銀色に輝いて見えた 片目が銀色の目をした吸血種の物語 一度目の脱走は 嘘みたいに呆気なく失敗に終わった 二度目の脱走は 懲罰房から出てすぐのこと このときの脱走は成功する そのあとすぐに捕まって 二週間の懲罰房入り 三度目の脱走も成功する 毒の血のジュース事件を知ってるかしら? クランの食堂で出された兎の血のジュースに リコリスの毒が混入されていた 毒の血のジュースを飲んだ生徒で 医務室は溢れ返り クラン中が大騒ぎ 騒ぎが収まった頃 少年の姿はすでに消えていた 血盟警察が動き出す事態になったけれど 誰も彼を見つけることはできなかった 少年が向かったのは人間種の世界 互いの世界を侵犯してはならぬ 不可侵条約があればこそ 吸血種が身を隠すには打ってつけの場所 喉の渇きを潤すために少年は 夜道をひとり歩く少女を獲物に定めた 首筋に牙を突き立てようとした 少年の目は闇に吸い込まれる まるで死んでいるかのような白い肌 まるで夜しかしらないような黒い瞳 夜のような少女は怯える様子もなく 心奪われた少年は一目で恋に落ちたのだった 人間種と吸血種 互いに世界を別つふたり 両親を亡くして孤独である少女は 自分を襲おうとした少年を匿った 彼が吸血種であることをわかりつつ 少女はどこからか手に入れた血液を 少年に施し与え その渇きを癒す 時を同じくして その少女の住む村は恐怖に陥っていた 村の人間が次々と殺されていった 猟奇的連続殺人事件 誰の仕業かもわからずに 村中に疑心暗鬼が蔓延する ある日少年は物音に気付く 真夜中に少女がどこかに出かける 後を追う少年 少女は歩みは迷いなく そこは若い夫婦の住む家だった 少年が窓から覗くと 身重の妻が殺されていた 小さな村を震撼させた 猟奇的連続殺人事件 すべては彼女の仕業だった 夜のような少女 一目で恋に落ちた 夜のような少女 血を与えてくれた 夜のような少女 彼女は狂気の虜であった 気がつくと少年のその手は 少女の首を絞めつけていた 夜は恍惚とした笑みを浮かべながら 少年の手によって息絶えた その光景を見ていた者がいた 妻を殺されたばかりの男だろう 少年はすぐさま逃げ出した 夜のような少女 彼女の犯した罪のすべては 少年のものとなるだろう 片目を潰された繭期の少年 白濁した瞳は光があたると銀色に輝いて見えた 片目が銀色の目をした吸血種の物語 |
| 地平線のディエゴ少年が最後に見た世界は 地平線に沈んでいく夕景だ 今日にさよならを言いながら 陽は沈んでいく誰かの明日のために 生まれた時から運命に見放されていた 人間種と吸血種の混ざり子ダンピールだ 少年は自己存在を呪いながら 逃げて逃げて逃げ続けた ようやくたどり着いたのは 嘘という名の檻の中で 本当の自分なんてどこにもいない 檻の中で誰よりも自由でいたかった ずっと外を眺めていた そこから見える景色はどんなものだろう 一日の終わりに空が夕暮れに染まっていく 今日という一日が死にゆく景色だ 誰かが言っていた心の色は 血よりも赤い赤だという あの夕暮れのような赤であればいいのに ようやくたどり着いたのは 嘘という名の檻の中で 友情なんてどこにもなかった それでも約束した、みんなを連れていくと 終わることのない永遠の繭期に その約束が果たされることはなかったけれど 気がつけば檻の中でも逃げ続けていた ダンピールの限られた時間の儚さを知る それでも夕暮れに願わずにはいられなかった また明日がやってくることを あの夕暮れのような赤をずっと見ていたかった この手はなんだって掴むことができる そう信じていた あんたを自由にしてやると言った 自由じゃないのは自分とも知らずに だからまた逃げなければいけない 夕暮れを幾重にも越えた空の彼方に なにも見えない まだなにも そこに行ってみなくては 逃げることは罪だった 罪を犯した少年は囚われた 檻の中のさらに奥深く ヘル・クランと呼ばれる まるで牢獄に 出口は堅く閉ざされている そこからは誰も逃れられない そこからはあの空も見えはしない だから少年はそこにはいられなかった その両の手が自由に届くところにまで 檻を壊した少年は駆け出した 逃げるためではなく生きるために 息が切れるまで 心臓の鼓動が止まる前に 闇を払うようにして追っ手から逃げた 傷いて打ちのめされてまた傷ついて 心が今にも尽き果てそうだ その時 一筋の光が見えた あと一歩 あと一歩 自分が呪った運命の出口へと 重たい足取りを進める 少年がようやく檻の外に出ると 目の前に広がるは遥かな地平線だった 少年が最後に見た世界は 地平線に沈んでいく夕景だ 今日にさよならを言いながら 陽は沈んでいく誰かの明日のために 空が夜に染まり星が瞬く頃に 地平線のディエゴは長い長い眠りについた 永遠の繭期を夢に見ながら | TRUMPシリーズ 繭期幻想樂団 | 末満健一 | 和田俊輔 | | 少年が最後に見た世界は 地平線に沈んでいく夕景だ 今日にさよならを言いながら 陽は沈んでいく誰かの明日のために 生まれた時から運命に見放されていた 人間種と吸血種の混ざり子ダンピールだ 少年は自己存在を呪いながら 逃げて逃げて逃げ続けた ようやくたどり着いたのは 嘘という名の檻の中で 本当の自分なんてどこにもいない 檻の中で誰よりも自由でいたかった ずっと外を眺めていた そこから見える景色はどんなものだろう 一日の終わりに空が夕暮れに染まっていく 今日という一日が死にゆく景色だ 誰かが言っていた心の色は 血よりも赤い赤だという あの夕暮れのような赤であればいいのに ようやくたどり着いたのは 嘘という名の檻の中で 友情なんてどこにもなかった それでも約束した、みんなを連れていくと 終わることのない永遠の繭期に その約束が果たされることはなかったけれど 気がつけば檻の中でも逃げ続けていた ダンピールの限られた時間の儚さを知る それでも夕暮れに願わずにはいられなかった また明日がやってくることを あの夕暮れのような赤をずっと見ていたかった この手はなんだって掴むことができる そう信じていた あんたを自由にしてやると言った 自由じゃないのは自分とも知らずに だからまた逃げなければいけない 夕暮れを幾重にも越えた空の彼方に なにも見えない まだなにも そこに行ってみなくては 逃げることは罪だった 罪を犯した少年は囚われた 檻の中のさらに奥深く ヘル・クランと呼ばれる まるで牢獄に 出口は堅く閉ざされている そこからは誰も逃れられない そこからはあの空も見えはしない だから少年はそこにはいられなかった その両の手が自由に届くところにまで 檻を壊した少年は駆け出した 逃げるためではなく生きるために 息が切れるまで 心臓の鼓動が止まる前に 闇を払うようにして追っ手から逃げた 傷いて打ちのめされてまた傷ついて 心が今にも尽き果てそうだ その時 一筋の光が見えた あと一歩 あと一歩 自分が呪った運命の出口へと 重たい足取りを進める 少年がようやく檻の外に出ると 目の前に広がるは遥かな地平線だった 少年が最後に見た世界は 地平線に沈んでいく夕景だ 今日にさよならを言いながら 陽は沈んでいく誰かの明日のために 空が夜に染まり星が瞬く頃に 地平線のディエゴは長い長い眠りについた 永遠の繭期を夢に見ながら |