2026年8月12日に“竹内アンナ”が新作『MIXTAPE』をリリースしました。今作には、未発表曲3曲、2025年にリリースされた楽曲3曲、本作のために新たに書き下ろされた2曲の計8曲が収録されております。タイトルの『MIXTAPE』には、時代を超えた“アーカイブ”の意味が込められており、これまでの軌跡を辿るファンはもちろん、初めて彼女の音楽に触れるリスナーも幅広く楽しめる1作です。
さて、今日のうたではそんな“竹内アンナ”による歌詞エッセイを3週連続でお届けします。第1弾は収録曲「My secret plum」にまつわるお話です。相手を好きな気持ちと、相手を困らせたくない気持ち。その狭間で揺れながら、自分にとってのいちばんの幸せを考えた先に見えてきた、ひとつの答えとは…。
◆紹介曲「My secret plum」
作詞:竹内アンナ
作曲:竹内アンナ
「好き」という感情は、いつだって日常を彩ってくれる、ハッピーな魔法のようなもの。
ありふれたことさえ、特別に輝かせてくれるもの。
ただ、それだけではないのだと気づいたのは、高校生のころだったと思う。
恋は、ときどき、それまで大切にしていたものを人質に取る。
昨日まで仲の良い友達だったのに、
自分の気持ちに気づいた途端、あなたは「好きな人」になっていた。
わたしの許可なんてなく。
恐る恐る確かめるように、あなたの名前を小さく呼んだ。
胸の奥の、今まで触れたことのない場所に、風がヒュッと吹いた気がした。
放課後、いつものように並んで歩いた帰り道のことだった。
あなたの隣は、昨日よりずっと近いのに、ずっと遠い。
伝えなければ、関係は守れるかもしれない。
けれど、「友達だよ」と笑うたびに、自分の心に小さな嘘を重ねることになる。
恋とは、思っていたよりずっと不自由で、残酷なものなのだ。
そんなことを考えながら小石を蹴っているうちに、歩くペースが少しずつ落ちていく。
あなたの半歩うしろを歩く。
あなたは優しい人だから、もしわたしの気持ちを知ったら、
応えられないことをきっと自分のせいのように悲しむだろう。
少し困ったように目を伏せて、わたしを傷つけない言葉を一生懸命に探すのだろう。
そして最後には、「ごめんね」と謝るのだろう。
あなたを悲しませたくなんかないの。
だから、わたしにとっていちばんの幸せとは何だろうと、考えてみる。
あなたと恋人になること?手をつないだり、特別な名前で呼び合ったり?
それだけではない気がした。
もっとこう、柔らかくて、自然体でいられるような形。
そうだなあ、あなたがしあわせだったら、それでいいかも。
そんで、これからも一緒に笑えてたらいいかも。
そう思った。
想像していたよりもずっとシンプルな答えが、すぐに自分の中に浮かんだことに驚いた。
自分をないがしろにしているからではない。
見返りを求めずに愛せる自分を、誇りたいわけでもない。
ただ、あなたの幸せがわたしの幸せなのだと、
きれいごとではなく、本気で信じていた。
心の中では、愛の果実が育ちすぎて、すっかり熟していた。
あなたの何気ない言葉をひとつ受け取るたびに甘くなり、
あなたがほかの誰かに向ける笑顔を見るたびに、少しずつ苦くなった。
もしあなたに見つかったら、珍しそうに、
そして不思議そうに眺めて、「一口ちょうだい」なんて言うかもしれない。
けれど、あげられないよ。
今はまだ、甘くて苦いこの果実をかじるのは、わたしだけでいい。
傾いた陽が、わたしたちを柔らかく照らしていた。
振り返って、わたしを待ってくれているあなたに言った。
「また今度、おいしいもの食べに行こう」
<竹内アンナ>
◆紹介曲「My secret plum」
作詞:竹内アンナ
作曲:竹内アンナ
◆新作『MIXTAPE』
2026年8月12日発売
<収録曲>
1. ok, love song
2. PARADISE
3. adabana midnight
4. ハッピーエンドの続きを
5. P.S. I LOVE YOU
6. That's my name
7. 真昼のランデヴー
8. My secret plum





