My secret plum

 2026年8月12日に“竹内アンナ”が新作『MIXTAPE』をリリースしました。今作には、未発表曲3曲、2025年にリリースされた楽曲3曲、本作のために新たに書き下ろされた2曲の計8曲が収録されております。タイトルの『MIXTAPE』には、時代を超えた“アーカイブ”の意味が込められており、これまでの軌跡を辿るファンはもちろん、初めて彼女の音楽に触れるリスナーも幅広く楽しめる1作です。
 
 さて、今日のうたではそんな“竹内アンナ”による歌詞エッセイを3週連続でお届けします。第1弾は収録曲「My secret plum」にまつわるお話です。相手を好きな気持ちと、相手を困らせたくない気持ち。その狭間で揺れながら、自分にとってのいちばんの幸せを考えた先に見えてきた、ひとつの答えとは…。



「好き」という感情は、いつだって日常を彩ってくれる、ハッピーな魔法のようなもの。
ありふれたことさえ、特別に輝かせてくれるもの。
ただ、それだけではないのだと気づいたのは、高校生のころだったと思う。
 
恋は、ときどき、それまで大切にしていたものを人質に取る。
昨日まで仲の良い友達だったのに、
自分の気持ちに気づいた途端、あなたは「好きな人」になっていた。
わたしの許可なんてなく。
 
恐る恐る確かめるように、あなたの名前を小さく呼んだ。
胸の奥の、今まで触れたことのない場所に、風がヒュッと吹いた気がした。
放課後、いつものように並んで歩いた帰り道のことだった。
 
あなたの隣は、昨日よりずっと近いのに、ずっと遠い。
 
伝えなければ、関係は守れるかもしれない。
けれど、「友達だよ」と笑うたびに、自分の心に小さな嘘を重ねることになる。
恋とは、思っていたよりずっと不自由で、残酷なものなのだ。
 
そんなことを考えながら小石を蹴っているうちに、歩くペースが少しずつ落ちていく。
あなたの半歩うしろを歩く。
 
あなたは優しい人だから、もしわたしの気持ちを知ったら、
応えられないことをきっと自分のせいのように悲しむだろう。
少し困ったように目を伏せて、わたしを傷つけない言葉を一生懸命に探すのだろう。
そして最後には、「ごめんね」と謝るのだろう。
 
あなたを悲しませたくなんかないの。
だから、わたしにとっていちばんの幸せとは何だろうと、考えてみる。
あなたと恋人になること?手をつないだり、特別な名前で呼び合ったり?
それだけではない気がした。
もっとこう、柔らかくて、自然体でいられるような形。
そうだなあ、あなたがしあわせだったら、それでいいかも。
そんで、これからも一緒に笑えてたらいいかも。
そう思った。
 
想像していたよりもずっとシンプルな答えが、すぐに自分の中に浮かんだことに驚いた。
自分をないがしろにしているからではない。
見返りを求めずに愛せる自分を、誇りたいわけでもない。
ただ、あなたの幸せがわたしの幸せなのだと、
きれいごとではなく、本気で信じていた。
 
心の中では、愛の果実が育ちすぎて、すっかり熟していた。
あなたの何気ない言葉をひとつ受け取るたびに甘くなり、
あなたがほかの誰かに向ける笑顔を見るたびに、少しずつ苦くなった。
 
もしあなたに見つかったら、珍しそうに、
そして不思議そうに眺めて、「一口ちょうだい」なんて言うかもしれない。
けれど、あげられないよ。
今はまだ、甘くて苦いこの果実をかじるのは、わたしだけでいい。
傾いた陽が、わたしたちを柔らかく照らしていた。
振り返って、わたしを待ってくれているあなたに言った。
「また今度、おいしいもの食べに行こう」
 
<竹内アンナ>



◆紹介曲「My secret plum
作詞:竹内アンナ
作曲:竹内アンナ
 
◆新作『MIXTAPE』
2026年8月12日発売
 
<収録曲>
1. ok, love song
2. PARADISE
3. adabana midnight
4. ハッピーエンドの続きを
5. P.S. I LOVE YOU 
6. That's my name
7. 真昼のランデヴー
8. My secret plum