おやすみ

玄関に靴はひとつだけ
リュックを肩から下ろして
誰もいない部屋を見渡すと
付けっぱなしのテレビだけ
絶え間なく喋りかけてきて
今はもうそんな気分じゃないの

閉め切ったままのカーテン
湿っぽい部屋に一人で
くたびれて座り込んでいる

シンクには洗い物だらけ
冷えていたご飯を温めて
「いただきます」ってちゃんと手を合わすの
あとはもう眠ってしまうだけ
誰とも話さないままで
玄関の灯りは消さないでおくの

帰る場所はいつもここで
替えなんて他にはなくて
ぬいぐるみを抱き締めている

平気なフリをしていても
本当は気付いているんでしょう
眠ろうとして目を閉じると心の声が聞こえるの

何よりも欲しかった物は
漫画でもゲーム機でもない
お財布に残った数百円じゃ愛は買えないから
ずっと探しているのに
手探りでこの部屋の隅々
どこに落っことしてきたの
小さな欠片でも宝物だよ
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