未明

手と手合わせた時計。
信号は赤く灯火。
死にかけている街で律儀に立ち止まる。

空が白んで、何もかも喰われてしまう前に。

今日がまだ“今日で居てもいい”未明に、「最後だ」って嘘を吐いた。
泣かないと決めても止められない涙は鮮やかなライトを映した。

引き裂かれてしまった時計。
信号は意味を成さない。
取り残された夜に君の言葉を想う。

「傷つける手段を会得するだけで、壊そうと思えばいくらでも出来る。
そんな爪を引っ込めて生きているあなたは、優しいヒトなんだ」と。

「咲きそうで咲かない花は臆病だ」と笑っていた僕らは、
踏み出せない理由を誰よりも詳しく知っていたのに。

今日がまだ“今日で居てもいい”未明に、「最後だ」って嘘を吐いた。
瞬きをする度崩れ去る世界を何故か恋しく思う。

居たくて、痛くて、会いたくて。

捨て切れない弱さと、抱き締めたい未来への継ぎ目を歩く午前三時。

手と手伸ばした時計。
信号は青く、「行けよ」
何者でもない僕を生贄として捧ぐ。
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