2026年3月4日に“藤川千愛”がフルアルバム『半径3メートル』をリリースしました。今作には、TVアニメ『死亡遊戯で飯を食う。』エンディングテーマ「祈り」、TVアニメ『盾の勇者の成り上がり Season 4』エンディングテーマ「永遠に一回の」、デジタルシングルとしてリリースされた「誰も言ってくれないから」の他、多彩な楽曲が収録。
さて、今日のうたでは“藤川千愛”による歌詞エッセイを3週連続でお届け。第1弾は収録曲「嘘つき」にまつわるお話です。好きだから、愛に誠実だから、ついてしまう嘘。今も、そんなやっかいな愛情表現に振り回されているあなたへ。ぜひ、歌詞とあわせてエッセイをお楽しみください。
これから恋が始まるかどうか、この想いは成就するのか。そんな絶妙なタイミングには、確実に魔物が潜んでいる。
恋の匂いがした途端、足元から地獄の魔方陣でも湧いて出てきたのかと思うほど、私は「私ではない別の人間」に完全に乗っ取られてしまうのだ。
いちばん正直でありたい好きな人の前に立つと、私の思考回路には決まってバグが生じる。「すこしでも自分をよく見せたい」「一ミリだって嫌われたくない」。そんな欲にどっぷり漬かった本音が脳みそを狂わせ、口からは勝手に、やたらとぬるい嘘が零れ落ちていく。そうなるともう本来の自分のリズムなどそこにはなく、ただひたすらに薄っぺらい自分が自滅への道を全力疾走しているのだ。
「なんであんなことを言ってしまったんだろう」「どうして素直に伝えられなかったんだろう」。翌朝、布団の中で天井のシミを見つめながら、自分という生き物の馬鹿さ加減に心底情けなくなる。振り返れば、恋というやつはその失敗の連続だ。
たとえば、三度目のデートで「何が食べたい?」と聞かれたとき。たとえ、どんぶりのふちまで背脂がギトギトに浮いた凶暴なラーメンを無心ですすりたいくらい腹ペこだったとしても、「なんでもいいよ、あえて言うならあっさりしたものかな」なんて、心にもないぬるい嘘をつく私。
嫌われたくない一心でついたその嘘が、結果として本来の自分という人間のリズムを根底から壊していく。完全なる自滅である。
帰り道、本当は一番行きたかったこってりラーメンの店の前を通り過ぎながら、換気扇から漂う匂いの中で、「なんであんなことを言ってしまったんだろう」と途方に暮れる。ひょっとしたら彼だって、翌日まで鼻の奥にまで匂いが残るようなくっさいとんこつラーメンが好物かもしれないのに。そんな裏表のない女がタイプかもしれないのに。
嘘というものは本来、誠実とは真逆のところにあるはずだ。それなのに、愛に誠実だからこそ付いてしまう嘘というものがある。これほどやっかいで、始末に負えない愛情表現が他にあるだろうか。
好きな気持ちがそうさせる『嘘つき』
声は届かないのに想いは溢れてく
手を振るくせにまだ離れたくなくて
愛されたいと願って嘘ばかり増えて
本当の自分を隠して悔やんで
もうどうすればいいの?
欲しいのは逃げ場所じゃないよ
じゃあどうすればいいの?
ただ許されたいだけなんだ
嗚呼 また 嘘
間違いだって分かっているのに
この弱さだけがまだ息をしてる
壊れないように抱えた嘘が
君の愛に触れようと深く溺れてく
嗚呼 嘘で塞いだ心臓の穴が
君の温度を欲しがって疼いてる
本当は『ごめんね』じゃなくて『愛してる』って
ただ言えたなら…嘘つき
長い夜を紐解く短い言葉が
見つからなくてただ吸い殻だけ増えて
熱い本音飲み込んでぬるい嘘が残る
積み上げた空き缶やけにむなしくて
どうにもならないのなら
それでもいいさって顔して
気休めみたいな時間に
本気でしがみついてるなんて
嗚呼 また 嘘
永遠を誓いたいのにさよならを練習してさ
大切なほうから順番に台無しにしてる…笑えないよね
間違いだって分かっているのに
この弱さだけがまだ息をしてる
壊れないように抱えた嘘が
君の愛に触れようと深く溺れてく
嗚呼 嘘で塞いだ心臓の穴が
君の温度を欲しがって疼いてる
本当は『ごめんね』じゃなくて『愛してる』って
ただ言えたなら…嗚呼 嘘つき
<藤川千愛>
作詞:藤川千愛
作曲:藤永龍太郎(Elements Garden)
◆フルアルバム『半径3メートル』
2026年3月4日発売
<収録曲>
<収録曲>
1 なかったことに
2 痛いけど
3 誰かへ
4 悪口
5 祈り
6 嘘つき
7 不可逆
8 なんどでも
9 誰も言ってくれないから
10 永遠に一回の
11 ア!ニ!メ!






