淋しい鞄

男はいつでも心のなかに
淋しいかばんを持っている
日々の暮らしを渡る時
信号待ちで止まる時
男はかばんを開けてみる
はじめて愛した人の名や
ひとり暮らした街並が
息をひそめて入ってる

『あなたは風の中でも煙草を吸うのね
どんな時でも思い通りのことをするのね
そしていつかは忘れてしまう
私を忘れたことすらも』

男はいつでも心のなかに
淋しいかばんを持っている
夢に追われて生きる時
自分をそっと騙(だま)す時
男はかばんを開けてみる
またあどけない子供達(ら)や
明日を分け合う妻の瞳(め)が
ふっと微笑みかけてくる

『あなたは風の中でも煙草を吸うのね
どんな時でも思い通りのことをするのね
そしていつかは忘れてしまう
私を忘れたことすらも』
×